たまの乗り物日記

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東海道線の113系が2006年まで活躍した理由

東海道線京口113系が投入されたのは1963年、その前身の111系が投入されたのが1962年であり、2006年の撤退まで実に44年も使われており名実共に東海道線の「湘南電車」を代表する車両であったことは言うまでもありません。

しかし東海道線という日本を代表する線区でありながら、2006年まで113系が活躍したというのは意外なような気がします。すでに首都圏の大半の線区からは103系113系115系は撤退しており、横須賀線総武快速線113系が撤退したのが1999年12月でそこからでもすでに6年半が過ぎています。なぜ113系がここまで生き残ったのかという理由を振り返ってみたいと思います。

 

1) 国鉄の分割民営化で、113系の転用先がなくなってしまった

113系の後継車は1986年に登場した211系です。211系は東海道線に早速投入され、113系も順次入れ替わるのかと思われました。しかし1991年まで211系が投入されつつも、東海道線の3分の1を置き換えるにとどまり、結局2004年のE231系投入に至るまで113系東海道線の顔であり続けました。

これには国鉄の分割民営化が関わってきます。東海道線113系は1974年の0'番代、1978年(実際に東海道線に入ったのは1980年以降)の2000番代といった量産冷房車が多数入ったため、1986年の時点ではほとんどの車両が車齢10年程度と若い状態でした。国鉄時代であれば、211系を投入して順次地方線区へ113系を飛ばすことができたのですが、分割民営化で転属させる先がかなり狭まってしまいました。飛ばすとすれば幕張の房総ローカルになりますが、非冷房車が多いとは言え幕張の房総ローカルも1000番代初期車がほとんどでまだ廃車させるには早すぎる状態でした。従って、211系の投入ペースはスローにならざるを得ず、結果211系は113系を完全に置き換えることができなかったと推測されます。

これは横須賀線総武快速線113系にも言えることでした。国鉄時代は当線への投入計画があり、211系のシステムでは非常の際ユニットカット時に地下トンネルの勾配を登れないため、1M方式の車両をつなぐ計画までありました(このシステムを使って登場した車両が実は213系です)。しかし民営化後は同様の理由で、当線の113系1000'番代自体が老朽化する1994年にE217系が投入されるまで後継車は作られませんでした。

 

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東海道線の主力になれなかった211系。E231系が多数派になった今、追われる日も近いのだろうか(05.09.24 有楽町駅)

 

2) 東海車の扱いを解消するまで後継車を入れられなかった

東海道線113系は田町・国府津・静岡の3電車区体制のまま分割民営化を迎え、次のように割り当てられました。

・田町:基本11両(1991年に全て国府津へ転属し撤退)

国府津:基本11両+付属4両

・静岡:付属4両

この結果、例えば国府津の11両と静岡の4両が連結された車両が走るわけですが、同じ113系でも会社の所属が異なるという珍しい状態になりました。

これが厄介な存在で、後継車に置き換えるとすればJR東海も同じ車両を作らないといけないのですが、113系と異なりJR東日本が設計した車両を思想の違うJR東海が作るとは思えません。

かといって静岡車は113系の付属編成の半数を占めており、おいそれとJR東編成に統一することも困難でした。

さらに運用上も、付属編成がJR東管内を走り回る一方、基本編成は沼津・静岡・島田まで運転する運用も多く、これはそれなりに乗客がいたことから簡単な廃止も困難でした。さらに静岡車はJR東海とは全く関係ない伊豆急行乗り入れ運用まで持っており、趣味的には面白くても運用なり精算上は非常に厄介であったと思われます。

最終的にはJR車の伊豆急行乗り入れ運用廃止、沼津以降の乗り入れ廃止、静岡車の撤退によるJR東車の統一、という策を2004年10月16日改正で取ることで、E231系への置き換えになるわけですが、これまで長い年月を要してしまいます。

 

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↑シスT6編成:クハ111-747(05.09.25 熱海駅

静シスT編成は2004.10改正で東京口から撤退したものの現在も熱海以西で活躍中。ただし313系投入も間近となり活躍もあとわずか。

 

3) 長年に渡るクロスロング論争

1990年代前半に211系増備車、113系115系に立て続けにロングシート改造車が登場し、クロスロング論争が巻き起こりました。こと東海道線に関しては熱海方面への行楽客が多いことからロング化への反対は大きく、しばしばマスコミネタにもなるほどでした。

E217系以降JR東の近郊型車両は4ドアが標準になり、一部を除いてロングシートが主体となりましたが、東海道線に対しては果たしてそれが適切な結果になるのか、一部の間では相当議論がおきたようです。直接の原因ではないにせよ、間接的な先送り要因の一つにはなったのではないかと思われます。

なお結果的にはE231系の投入になりましたが、東北・高崎線投入時よりもクロスシートの車両は増やされ、一応は行楽対応も考慮した形になっています。

 

そんなわけで、東海道線113系は2006年までの長きにわたり主力として君臨し続けることになりました。地元の通勤客(特に立ち客)にとっては実に迷惑だった話だと思いますが、113系ファンにとってはずっと113系に乗り続けることができたことで、結果的には良い結果になりよかったと思っています。